市街化調整区域に倉庫を建てたい企業へ|特定流通業務施設と開発許可の確認ポイント

特定流通業務施設 実務解説

市街化調整区域に倉庫を建てたい企業へ|特定流通業務施設という選択肢と、開発許可で最初に確認すべきこと

土地を買ってから気づくことがあります。「市街化調整区域では、原則として建物を建てることが難しい」という話です。不動産会社に言われる。建設会社に言われる。金融機関の担当者に言われる。そこで初めて、法的な壁に気づく運送会社の経営者は少なくありません。

物流・運送分野に限れば、市街化調整区域で物流施設を検討できる代表的なルートが3つあります。特積倉庫、大規模流通施設、特定流通業務施設です。土地を買う前、建築計画を固める前、金融機関に融資相談をする前に、この違いを押さえておかなければ、あとから大きな手戻りが発生します。

1.3つの方法と、なぜ特定流通業務施設が有力なのか

特別積み合わせ貨物運送事業の許可を持つ事業者が建てる一時保管用倉庫については、都市計画法上、市街化調整区域に建設可能な場合があります。ただし、この方法で建てた施設は、倉庫業法上の営業倉庫としてそのまま使えるわけではありません。他社の荷物を長期的に預かり、保管料を受け取る営業倉庫ビジネスには使えないということです。特別積み合わせ貨物運送事業そのものを維持するための運行体制やコスト負担も伴います。

大規模流通施設は、積載重量5トン以上の大型自動車が、おおむね1日平均延べ20回以上発着する流通業務施設のことをいいます。地方運輸局長の認定などを前提に、市街化調整区域での開発許可を検討できる場合があります。ただし、建設を認めない自治体も多く注意を要します。

特定流通業務施設は、物流効率化法に基づく総合効率化計画の認定を受けた物流施設です。国土交通大臣などの認定を受けることで、市街化調整区域における開発許可について、検討できる可能性が出てきます。認定を受ければ当然に建設できるわけではありませんが、農地法、農振法、自治体の開発許可基準、周辺道路の交通処理など、別に確認すべき事項を整理したうえで、計画を前に進められる可能性があります。

特定流通業務施設には、ほかの2つにない広がりがあります。

営業倉庫としての利用を前提に検討できること。一般貨物自動車運送事業の営業所や車庫を同じ敷地内に置く余地があること。倉庫、運送、荷さばき、流通加工、荷主との取引を一体で考えられること。3つの選択肢の中で、事業としての広がりが最も大きい選択肢です。

2.特定流通業務施設とは何か

物流効率化法は、輸送、保管、荷さばき、流通加工を一体的に行い、輸送網の集約、モーダルシフト、共同配送などを通じて物流を効率化する取組を支援する法律です。この法律に基づき、2以上の者が連携して流通業務の省力化や環境負荷の低減に取り組む計画について、総合効率化計画の認定を受けることができます。その認定を受けた物流施設が、特定流通業務施設と呼ばれます。

認定を受けると、開発許可の検討において配慮を受けられる場合があります。倉庫業登録、一般貨物自動車運送事業許可など、関連する許認可について、手続上の特例や行政機関との調整を受けられる場合もあります。

注意すべきポイント

認定を受ければ関連許認可が自動的に取得できるわけではありません。倉庫業登録には倉庫業法上の施設設備基準があります。一般貨物自動車運送事業の営業所や車庫には、運送事業法上の要件があります。それぞれの許認可について、個別の要件を満たす必要があります。

税制上も、一定の要件を満たす営業倉庫について、法人税等の割増償却、固定資産税や都市計画税の課税標準の軽減といった措置が用意されています。ただし、税負担の軽減額は施設規模、建物や設備の評価額、利益の状況、自治体の課税内容によって変わります。施設規模によっては相当額の税負担軽減が見込まれる場合もありますが、個別に試算する必要があります。

3.要件の概要――数字を見なければ判断できません

特定流通業務施設の認定を受けるためには、計画の中身が国の定める基準を満たしていなければなりません。2以上の法人が連携した計画であること、輸送・保管・荷さばき・流通加工を一体的に行うこと、輸送の合理化を伴うこと、現行と比べてCO2排出量の削減効果が定量的に見込まれること、トラックの荷待ち時間の削減効果が見込まれることが求められます。

「難しそうです」とだけ書いても、運送会社の経営者にとっては何の判断材料にもなりません。市街化調整区域に土地を持ち、倉庫を建てることを真剣に検討している会社にとって必要なのは、具体的な数字です。

立地要件
高速道路のインターチェンジから5km以内など、一定の社会資本に近接していることが求められます。

規模要件
普通倉庫の場合、平屋で3,000㎡以上、多階建で6,000㎡以上が一つの目安になります。

構造要件
鉄骨造、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造など、倉庫業法上の施設設備基準に適合する建物である必要があります。

設備要件
トラック予約受付システム、高規格バース、大型車が安全に出入りできる荷さばき場や転回場、データ交換システム、貨物保管場所管理システムなどが問題になります。「システムを入れます」と書けば足りるものではありません。施設に出入りする運送事業者が実際に使える内容になっているか、日常運用に耐えられるかが問われます。

これらの数字や設備要件を見たうえで初めて、その土地で計画を進められるのか、施設規模をどう考えるのか、営業倉庫として成り立つのかを判断できます。

4.申請よりも前に決まること

特定流通業務施設の成否は、申請書を作成する前の段階で実質的に決まります。先に土地を買う、先に建築会社に図面を依頼する、先に金融機関に融資相談を進める、その順番で動いてしまうと、あとから大きな手戻りが発生します。

立地の確認

インターチェンジから5km以内という要件は地図上では単純に見えますが、その土地が農振農用地区域に入っているか、農地転用の見通しがあるか、自治体の開発許可基準と整合するか、周辺道路の交通処理に問題がないかを確認しなければなりません。物流効率化法の認定を受けても、農地法や農振法の問題が消えるわけではありません。

連携事業者の組み立て

総合効率化計画は、2以上の者が連携することが前提になります。運送会社同士で組むのか、倉庫会社と組むのか、荷主企業も入るのか。荷主企業が入る場合には、国土交通省だけでなく、経済産業省や農林水産省との関係が出てくることもあります。ここを軽く考えると、後から計画全体を組み直すことになります。

荷待ち時間・CO2削減の定量化

「荷待ちを減らします」「環境に配慮します」という文章だけでは足りません。現在の物流の流れを数字で整理し、計画後にどのように変わるのかを比較できる形にしなければなりません。トラック予約受付システムについても同じです。導入予定と書くだけではなく、誰が、どの時間帯に、どの車両について予約を入れるのか。主要な取引先や運送事業者が実際に使えるのか。そこまで確認される可能性があります。

税制措置のタイミング

建物が完成してから考えるのでは間に合わない場合があります。施設の取得時期、竣工時期、認定時期、税務申告の時期を逆算して動かなければなりません。

開発許可と行政機関との事前調整

地方運輸局が関係行政機関に意見を聴く過程で、発生集中交通量の予測、周辺道路の交通需要、出入口の位置、大型車の動線など、追加資料を求められることがあります。申請から認定までの標準処理期間だけを見て、「2か月程度で認定が取れる」と考えるのは危険です。それは、必要な事前相談や関係行政機関との調整が進んでいることを前提にした話だからです。

5.認定を取ってからが本番です

特定流通業務施設は、認定を取れば終わりではありません。

定期報告義務
認定後は、一定期間、毎事業年度終了後に事業の実施状況を地方運輸局へ報告する義務があります。報告を怠ると罰則の対象になる場合があります。

変更認定・認定取消
計画の内容を変更する場合には変更認定が必要になることがあり、認定基準に合わなくなった場合や計画どおりに事業を実施していないと判断された場合には、認定が取り消されることもあります。

税制措置の継続管理
荷待ち時間や荷役時間など、要件を満たしていることを毎年度確認し、必要な書類を整えて税務申告につなげる必要があります。

通常の法令維持管理
施設が稼働し始めれば、倉庫業登録に基づく帳簿整備、保管証明の発行体制、一般貨物自動車運送事業の営業所・車庫の管理、実運送体制管理簿の整備など、通常の法令維持管理も始まります。

認定を取るためだけの手続ではないのです。認定後に施設を運用し、荷主との取引を続け、倉庫業・運送業の法令管理を続けていくための準備が、認定前から見えていなければなりません。

6.まず、認定可能性を確認することから始めます

土地を買った後、建築会社に図面を依頼した後、金融機関との話が進んだ後では、変更が難しくなることがあります。

市街化調整区域で倉庫を建てたい場合、まず確認すべきなのは、その土地で何ができるか、どの許認可が必要か、どの順番で行政機関と協議すべきかです。

建築の話を進める前に、まず行政手続と許認可の順番を確認することが、あとから発生する手戻りを防ぐことにつながります。

当法人は、特定流通業務施設の認定取得支援実績を有しています。認定申請の支援から、認定後の定期報告、倉庫業登録、一般貨物自動車運送事業の許可・営業所・車庫認定まで、物流施設に関する行政手続を一体で確認できる体制を整えています。

ただし、いきなり認定申請に進むべきではありません。最初に行うべきなのは、「この土地で特定流通業務施設として進められる可能性があるのか」を確認することです。そのため、当法人では初期段階のサービスとして、「特定流通業務施設・認定可能性診断」を行っています。

認定可能性診断で確認する内容

立地、施設規模、流通加工の有無、荷待ち時間削減の見通し、CO2排出量の試算可能性、連携事業者の組み立て、開発許可との関係、税制上の措置の適用可能性を整理し、認定申請に進める余地があるかどうかを確認します。どの行政機関との事前相談が必要になるか、倉庫業登録や一般貨物自動車運送事業の営業所・車庫との関係に問題がないかも、早い段階で確認します。

市街化調整区域で倉庫を建てたい運送会社にとって、最初に必要なのは図面ではなく、認定可能性の見立てです。

※ 認定申請の前に、まず現状の土地・施設計画の整理が必要な場合はその段階から対応しています。

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